江戸時代の暮らしというと、どのようなイメージを持つでしょうか。 着物を着て、長屋に住み、質素な食事をしていた──そんな姿を思い浮かべる人も多いかもしれません。

しかし、江戸時代の庶民の暮らしを調べてみると、実際にはもっとさまざまな生活がありました。 江戸には商人や職人、奉公人、日雇いで働く人など、多くの人が暮らしていました。 食べ物を売り歩く人もいれば、寿司やそば、天ぷらなどを楽しむ人もいます。 住まいも、広い屋敷から小さな長屋までさまざまでした。

前の記事では、古文書をもとに武士の家計を紹介した『武士の家計簿』を取り上げました。 では、武士ではない普通の人々は、どのような生活をしていたのでしょうか。

この記事では、江戸の町で暮らしていた庶民を中心に、住まい・食事・仕事・収入・ものの使い方から、江戸時代の暮らしを見ていきます。

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2.江戸時代の「庶民」とは?

まず、「庶民」といっても、江戸時代にはさまざまな人がいました。

  • 商売をする商人
  • ものづくりをする職人
  • 店で働く奉公人
  • 日雇いの仕事をする人

仕事も収入もそれぞれ違います。

農村で暮らす農民も庶民に含まれますが、この記事では特に江戸の町で暮らす人々に注目します。

そのため、「江戸時代の庶民はみんな同じような暮らしをしていた」と考えるのは正確ではありません。 商売が成功して裕福な暮らしをしていた商人もいれば、その日の仕事を探しながら生活する人もいました。

同じ江戸の町に住んでいても、収入や住まい、仕事によって生活にはかなりの違いがあったのです。

では、江戸の町で暮らす人々は、具体的にどのような家に住んでいたのでしょうか。

3.江戸の人々はどんな家に住んでいた?

江戸の町で多くの庶民が暮らしていた住まいとして知られているのが長屋です。

長屋にはいくつかの種類がありますが、その中には「九尺二間」と呼ばれる非常にコンパクトな住まいもありました。

  • 間口:約2.7メートル
  • 奥行き:約3.6メートル
  • 全体:約3坪ほど

現在の感覚からすると、かなり狭く感じる広さです。 それでも、その限られた空間を工夫して使って生活していました。

入口付近には土間があり、かまどなどを置いて炊事をします。 現代のような大きな収納はなく、衣類は行李や風呂敷に包んで収納し、布団も使わないときは部屋の隅へ。

長屋では井戸や便所などを共同で使うこともありました。 さまざまな職業の人が同じ長屋に暮らしていたため、近所付き合いも生活の一部です。

家賃も時代や場所によって異なるため、「江戸時代の家賃は一律で○○だった」とは言えません。

住まいが決まれば、次に必要になるのが食費です。

4.江戸時代の庶民は何を食べていた?食費はいくら?

江戸時代の庶民の食事というと、質素な一汁一菜を思い浮かべるかもしれません。 もちろん、毎日の食事が現在のように豊富だったわけではありません。

しかし、江戸という大都市にはさまざまな食材が集まっていました。

  • 野菜
  • 豆腐
  • 味噌・醤油

江戸近郊から野菜が運ばれ、江戸湾でとれた魚介類も食卓に並びました。

そして江戸の食生活を面白くしているのが外食文化です。

そば、寿司、天ぷら、うなぎなどを扱う店や屋台が広がり、棒手振(売り歩きの商人)から食べ物を買うこともできました。

つまり、江戸時代の庶民の食事は「毎日質素なものだけ」ではありません。 普段の食事があり、外食や屋台を楽しむ文化もあったのです。

ただし、江戸時代の「1文」を現代の金額に単純換算するのは難しく、 当時の人にとってどの程度の負担だったのかという視点で見るほうが分かりやすいでしょう。

5.江戸時代の庶民はどうやってお金を稼いでいた?

江戸時代の庶民の仕事は、現在よりもずっと多様でした。

職人

大工、左官、桶職人など、技術を生かして働く人。

商人

店を構えて商品を売る人だけでなく、町を歩きながら販売する人も。

奉公人

店で働き、江戸の町を支える存在。

日雇い

その日の仕事によって収入を得る働き方。

女性も家事だけでなく、奉公や商売などさまざまな形で仕事に関わっていました。

収入が安定している人もいれば、仕事の有無で収入が変わる人もいました。 だからこそ、家計のやりくりが重要だったのです。

そして、限られたお金で生活するためには、新しいものを買わない工夫も必要でした。

6.お金をかけずに暮らすための江戸の工夫

江戸時代の暮らしを調べると、ものを大切に使っていたことが分かります。

ただし、現代の感覚で「環境に優しいリサイクル社会だった」とだけ捉えるのは少し違います。 当時はものを簡単に買い替えられる環境ではなかったため、自然と修理・再利用が広がったのです。

衣類

古くなったら仕立て直し、別の人が使い、布の切れ端も掃除に利用。

古着商

使い終わった衣類が別の人の手に渡る仕組み。

紙の再利用

紙も回収され、再利用されました。

修理の職人

  • 鋳掛屋(鍋など金属製品の修理)
  • 焼継ぎ(陶器の修理)
  • 下駄や草履の修理

町の中に「ものを長く使う仕組み」があったのです。

江戸時代から続く道具を、今の暮らしで使ってみる

江戸時代の道具の中には、現在でも身近なものがあります。

江戸箒

昔ながらの材料と製法で作られ、今でも実用品として使える。

手ぬぐい

手を拭くだけでなく、入浴、頭にかぶる、包むなど多用途。 現代でも掃除・台所・入浴・ハンカチ代わりなどに使える。

博物館に展示されるような「昔の道具」ではなく、今の生活に取り入れられる実用品です。

昔ながらの道具を暮らしに取り入れてみる

江戸時代の道具に興味を持った方は、現在販売されている江戸箒や手ぬぐいを見てみるのも面白いでしょう。

「江戸時代の道具を買う」というより、 昔から続いてきた道具を今の暮らしで使ってみると考えると取り入れやすいはずです。

7.武士と庶民のお金の使い方を比べてみる

武士と庶民では、お金の入り方も使い方も大きく違いました。

武士

俸禄をもとに生活。 家族の生活費だけでなく、奉公人、交際費、贈答、立場を維持するための支出も必要。

庶民

商売・職人仕事・奉公・日雇いなど多様な収入源。 家賃、食費、衣類、仕事道具などを支払う。

つまり、何にお金が必要なのかが違うのです。

「どちらが裕福か」よりも、 どのようにお金を得て、何に使う生活だったのか を見るほうが江戸時代の家計は分かりやすくなります。

8.江戸時代の家計から見えてくること

江戸時代の庶民の暮らしは、単純に「質素だった」とはまとめられません。

  • 狭い長屋で暮らしながらも商売があり、食べ物が流通
  • 外食文化が発達
  • 衣類や道具を修理・再利用して長く使う

「何でも我慢する生活」ではなく、環境に合わせて工夫して暮らしていたのです。

家計の視点で見ると、現代にも通じる部分があります。

  • 何にお金を使うか
  • 何を買わずに済ませるか
  • 収入の中でどう生活するか

江戸時代の家計を見ることは、昔の物価を知るだけでなく、 限られたお金や物をどう使い、どんな生活を作っていたのかを知ることでもあります。

9.まとめ

今回は、江戸時代の庶民の暮らしを、住まい・食事・仕事・収入・ものの使い方という視点から見てきました。

  • 多くの人が長屋で暮らし、仕事をして収入を得ていた
  • 食事は米・野菜・魚を中心に、外食文化も発達
  • 衣類や道具は修理・再利用して長く使われた
  • 武士と庶民では家計の仕組みが大きく異なる

江戸時代と現代では生活環境が大きく違うため、 当時の家賃や食費を現在の金額に置き換えるだけでは理解できません。

「どのようにお金を得て、何に使い、どんな工夫をして暮らしていたのか」 という視点で見ると、江戸時代の生活がより分かりやすくなります。

昔の人も、収入と支出を考えながら暮らし、限られたものを大切に使っていました。 江戸時代の家計を知ることは、今の私たちがお金やものとどう付き合うかを考えるきっかけにもなります。

もっと江戸時代の暮らしを知りたい方へ

江戸時代のお金や暮らしについて詳しく知りたい方には、以下の本がおすすめです。